京の路地から From Kyoto with Love

Why don't you visit Kyoto to meet something new? 京都は私の空気、水のようなもの。新しい京都、古い京都。その中で、日々綴った、現代の枕草子。

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Location: 京都市, 京都府, Japan

悪戯な好奇心の猿一匹、飼っています。Keeping a curious monkey in my mind.

May 31, 2010

鉄ちゃん哀歌、JRとJTBに旅心なし。

 日本旅行が500系新幹線の引退当日に、博多・東京を往復する「最終日乗車プラン」を企画したところ、定員110人のところ、発売10分で完売、50人のキャンセル待ちが出たそうです。500系新幹線は始めて時速300kmで走った、鉄道ファンには忘れられない車種でした。
http://park7.wakwak.com/~oya-p/train/haisen.html

 ところで、我が国の鉄道旅客人口はJR六社だけで年間89億9千万人で、二位インドの51億人、三位ドイツの17億人を抜いて、日本はダントツで世界一です。おかしいと思いませんか? 鉄道は儲かっているはずです。なのに、赤字だからといって、全国の地方路線を次々に廃線に追い込むは、ブルー・トレインをなくすは、旅の楽しみのひとつの食堂車やビュッフェを廃止するは、鉄道員を減らして、事故をふやすは・・。地方路線の廃線時には、必ず現地では残存を求める声が上がっていますが、「赤字」を盾に、その声には聞く耳をもたないのが、JRを始めとする日本の鉄道会社のやり方です。赤字路線ほど、生活に必要な、地域の足なのですから、儲けにならないから廃線、という会社の「金の論理」でごり押しはご遠慮願いたいところです。それに鉄道ファンにとっては、貴重なアイテムなのですから。これは文化の問題です。

 別の話ですが、毎日のようにどこかで事故を起こしている京都の市バスですが、赤字だからといって、路線を切り詰める、路線を廃止する、人員を削減する、のは止めてほしい。結局、バスの本数が少なくなるし、混んでいるし、今まで一本で行けたところへ、乗り換えないと行けなくなるし、ではお年寄りにはキツい。お年寄りでなくても十分キツい。結局不便になって、ますます利用客が減って、全国一高い運賃をまた値上げして、というお決まりの悪循環です。そもそも「赤字だから」という理由がわからない。地方公共団体の交通機関が、納税者である住民相手に金儲けを企んでいるのか?と訝しい。「住民の足」を確保するのが第一の目的のはずなのに、儲けにならないからといって、ある路線を切り捨てます、という理屈は通らないと思うのですがね。

 JTB が商品売りっぱなしで、現地でのトラブルに全く対処してくれないことは別に書きましたが、窓口も悪辣です。パンフレットをみると、とても買いやすい価格のツアーを大きな字で印刷してありますが、安い価格帯は、働いている人にはとても行けない期間が設定してあります。そして、百貨店のバーゲンなみの「〜から」料金で、実際には倍くらい高いツアーを選ばざるをえなくなっています。去年上海ツアーの相談に行った時、自分のプランに合った価格帯で問い合わせると、「その期間は満席で予約がとれない」と言います。そして、「あ、ひとつ空きがありました」と言って、同じ期間ですが、最高の価格帯よりもまだ高価なツアーを押しつけてくるではありませんか。始めから「おとり」メニューを看板に、実際には高いツアーを売りつけようという、悪徳不動産屋なみの手口です。JTB が満席だというツアーだって、実際現地へ行ってみると、ホテルもガラ空きだと言っていた人がいました。

 かつては大阪から東京へ、夜行の「銀河」という急行がありました。学生には強い味方でした。それもとうに廃止されて、結局高くて味気ない「のぞみ」に乗るしかない状況です。それって「旅行」じゃなくて、「運送」ですよね。青森行きの特急「白鳥」も懐かしい列車です。2005年に廃止された、長距離寝台特急「さくら」や「あさかぜ」をご記憶の方も多いと思います。旅行好きの人のために、せめて週一でいいから、残せないものなのでしょうかねえ。

 アメリカのニューオーリンズの「欲望という名の電車」"Streetcar Named Desire"、は現役です。テネシー・ウィリアムズの戯曲のタイトルになっていて、ヴィヴィアン・リー主演の映画(1951年)に登場します。1923年から、そのままの姿で、エアコンもない車両が、今日も走っています。日本では京都の市電は、車社会の邪魔者として、追い払われて、今、その増えすぎた車による環境破壊に、自分たちが苦しんでいます。「自動車会社」を儲けさせることが、第一だったのです。京都の街は、歩いてこそ旅の真価があります。市電・市バスを足にして、肌で街を感じなければ、京都を旅したとは言わせない。ふと横町の名もない雑貨屋さんで、ささやかな衝動買いをしてこそ、それが忘れ得ぬ旅情を醸すことになります。
http://www.geocities.jp/travelog73/RecNeworleans.htm
http://homepage2.nifty.com/kisya/kyotosiden.htm

 ギネスブックが公認する世界一の豪華列車は、日本でもアメリカでもない、南アフリカを走っています。日本が経済大国で、日本人は金持ちという幻想から、私たちはいい加減解放されないと恥ずかしい。「金持ちの日本人はあんたのことじゃあねえんだよ」って、外国人に言われなければ、気付かない間抜けでは、真実恥ずかしいと思わないとね。その豪華列車は「ブルー・トレイン」といって、アフリカ大陸南端のケープタウンと、南アフリカの首都ブレトリア間を約27時間、一泊二日で走っています。駅へ行くと、まず制服ポーターにスーツケースを預けて、待合室に案内され、ソファーでシャンパンを飲みながら待たされます。すると黒服のトレインマネージャーが現れ、挨拶して、乗客をプラットフォームへ案内。自分のキャビンに入ると、テーブルにはフルーツが盛られて、クーラーにはシャンパンが冷やされてあります。すべて無料です。道中、食堂車でのフルコース・ディナーも、バーカーで飲む酒も、すべて無料です。というか、それだけの料金をすでに払っている、ということです。キャビン内には大理石のバスタブまで付いているそうです。(櫻井 寛「今すぐ乗りたい!世界名列車の旅」新潮文庫)
http://www.youtube.com/watch?gl=JP&hl=ja&v=QB-at6dscyg

 旅をするのは、ただどこかへ行くことではありません。食堂車もビュッフェもシャワーもガラス張りの展望車も、本当に客を荷物のように輸送する以外、何の機能もない新幹線での旅行でいい、という人はそれでいいのですが、食堂車で地方のグルメを楽しむのも、旅の楽しみだと思うのですが。おそらく旅好きの外国人が日本へ来たとき、日本の列車の旅を、この上なく退屈なものと感じて、また日本へ来たいと思う人は多くないと思います。あの列車に乗るために、また日本へ行きたいと、思わないよね。

 旅の楽しみをひとつ、またひとつと奪われていく日本の鉄ちゃんたちが、可哀想に思えてなりません。そんなことを、旅行する人の権利だと、思うほどは日本の文化は高くないのでしょう。鉄道会社の金儲けが第一で、旅客の満足は全く考慮されない日本の鉄道事情が情けないです。

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