分娩難民の国
今日はちょっと深刻な話です。日本という国の文化度が試される話題です。国民ひとりひとりの方が、真剣に理解して下さらないと、いつまでたっても問題は解決せず、実際困るのは自分自身だということです。
妊婦さんがたらい回しされた挙げ句、生命を失う事例が続き、また、分娩の取り扱いを止める産科医が増加する昨今、妊娠中の異常、分娩の場所に困る場合が、大都会でも希ではなくなっています。
産科に特有の問題の最大のものは、産科当直は産科医にしかできない、ということです。妊娠中の異常事態や分娩時の異常は、産科医しか診療できないということです。
しかし産科単独の診療科を設ける施設は少なく、大抵は産婦人科として、産科・婦人科の両方の患者さんを取り扱います。似ているようですが、両者は全く別物で、産科は病気ではなくて、非保険診療で、婦人科は癌を含めた、主に手術症例を取り扱います。産婦人科の先生方は、産科・婦人科の両方の外来診療をして、手術をして、分娩の取り扱いもします。分娩を取り扱う施設では、必ず産婦人科医が当直で24時間勤務しています。当直であっても、外来、病棟の仕事、手術等はあります。
当直の当番の日は、朝の9時から、翌朝9時までがその任なのですが、翌朝9時に仕事は終わりません。翌朝には次の日の勤務が待っていますから、たとえ前夜眠らずに働いた後でも、その体で外来や手術をこなさなければなりません。9時に始めて、翌朝の9時で24時間ですが、翌日の午後5時過ぎまでは定時の仕事です。ここまでで32時間です。ところが5時に仕事が終わることはまれです。さらに仕事が追ってきます。産科は緊急手術の多い科ですから、一晩に3件、4件の緊急手術をすることもあります。
施設の産婦人科医が4人だったとしたら、平均4日に1回の当直勤務です。月に7〜8回の計算になりますが、月に7〜8回は2日間の連続勤務ということです。月の半分ですね。医師の数が少なければ、もっと増えます。4人でも誰かが休暇などで休めば、それが残った医師の負担になります。もし、女医さんがいて、産休や育児休暇をとったら、3人で4人分の仕事をします。
当直の夜間、問題のコンビニ受診がたびたびあります。明日でもよいのに連絡もなく、いきなり病院に来たり、電話で明日でいいと言っても、どうしても今夜診て欲しいと言われることもしばしばです。夜の2時と4時にそんな外来を診たら、もう睡眠不足です。おまけに、夜間には分娩がありますから、そのたびに起こされています。コンビニ受診をされる患者さんに限って、来なくていいと言ったら、何故診ないのか、とすごみます。親戚の看護士とかが付いてきて、こってりと苦情を並べることもしばしばです。夜中の3時に腹痛を訴えて来て、便秘の診断で浣腸したら、ああすっとしたわ、とか言って帰っていく人もいます。帰る前に、大腸癌かもしれないから検査してもらえるか、なんてとんでもないことを言う人もいます。
産科医がお産の取り扱いを止める気持ち、少しは解っていただけるでしょうか? 若い医師が、産科を避けたくなる理由が、わかっていただけるでしょうか?
困っている患者がいるのに、何故診ないのか、何故たらい回しになるのか、実は問題の根は深いのです。今や、医師ひとりひとりの善意だけでは解決しないところにきています。当直の翌日を休暇にするようにと、私は常々言っているのですが、実現しません。産科医の給料を上げろというのですが、これも実現しません。医者がおかしいと言っている今の総理大臣のもとでは、産科難民はなくならないでしょうね。
妊婦さんがたらい回しされた挙げ句、生命を失う事例が続き、また、分娩の取り扱いを止める産科医が増加する昨今、妊娠中の異常、分娩の場所に困る場合が、大都会でも希ではなくなっています。
産科に特有の問題の最大のものは、産科当直は産科医にしかできない、ということです。妊娠中の異常事態や分娩時の異常は、産科医しか診療できないということです。
しかし産科単独の診療科を設ける施設は少なく、大抵は産婦人科として、産科・婦人科の両方の患者さんを取り扱います。似ているようですが、両者は全く別物で、産科は病気ではなくて、非保険診療で、婦人科は癌を含めた、主に手術症例を取り扱います。産婦人科の先生方は、産科・婦人科の両方の外来診療をして、手術をして、分娩の取り扱いもします。分娩を取り扱う施設では、必ず産婦人科医が当直で24時間勤務しています。当直であっても、外来、病棟の仕事、手術等はあります。
当直の当番の日は、朝の9時から、翌朝9時までがその任なのですが、翌朝9時に仕事は終わりません。翌朝には次の日の勤務が待っていますから、たとえ前夜眠らずに働いた後でも、その体で外来や手術をこなさなければなりません。9時に始めて、翌朝の9時で24時間ですが、翌日の午後5時過ぎまでは定時の仕事です。ここまでで32時間です。ところが5時に仕事が終わることはまれです。さらに仕事が追ってきます。産科は緊急手術の多い科ですから、一晩に3件、4件の緊急手術をすることもあります。
施設の産婦人科医が4人だったとしたら、平均4日に1回の当直勤務です。月に7〜8回の計算になりますが、月に7〜8回は2日間の連続勤務ということです。月の半分ですね。医師の数が少なければ、もっと増えます。4人でも誰かが休暇などで休めば、それが残った医師の負担になります。もし、女医さんがいて、産休や育児休暇をとったら、3人で4人分の仕事をします。
当直の夜間、問題のコンビニ受診がたびたびあります。明日でもよいのに連絡もなく、いきなり病院に来たり、電話で明日でいいと言っても、どうしても今夜診て欲しいと言われることもしばしばです。夜の2時と4時にそんな外来を診たら、もう睡眠不足です。おまけに、夜間には分娩がありますから、そのたびに起こされています。コンビニ受診をされる患者さんに限って、来なくていいと言ったら、何故診ないのか、とすごみます。親戚の看護士とかが付いてきて、こってりと苦情を並べることもしばしばです。夜中の3時に腹痛を訴えて来て、便秘の診断で浣腸したら、ああすっとしたわ、とか言って帰っていく人もいます。帰る前に、大腸癌かもしれないから検査してもらえるか、なんてとんでもないことを言う人もいます。
産科医がお産の取り扱いを止める気持ち、少しは解っていただけるでしょうか? 若い医師が、産科を避けたくなる理由が、わかっていただけるでしょうか?
困っている患者がいるのに、何故診ないのか、何故たらい回しになるのか、実は問題の根は深いのです。今や、医師ひとりひとりの善意だけでは解決しないところにきています。当直の翌日を休暇にするようにと、私は常々言っているのですが、実現しません。産科医の給料を上げろというのですが、これも実現しません。医者がおかしいと言っている今の総理大臣のもとでは、産科難民はなくならないでしょうね。
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