京の路地から From Kyoto with Love

Why don't you visit Kyoto to meet something new? 京都は私の空気、水のようなもの。新しい京都、古い京都。その中で、日々綴った、現代の枕草子。

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Location: 京都市, 京都府, Japan

悪戯な好奇心の猿一匹、飼っています。Keeping a curious monkey in my mind.

Sep 10, 2009

かく谷の天ざる

 医学部のある教授が、「学生の頃、かく谷の天ざるが食べたかったなあ」と語っているのを聞いたことがあります。

 かく谷(075-771-2934)は、京大病院の正門の近くにある普通のお蕎麦屋さんです。とりたてて言う高級店ではなくて、また、ちょっと 前に流行ったいかにも脱サラのお兄さんがバンダナを巻いて、というあのいやらしいお店でもありません。今時の学生なら、余裕で注文できるメニューでしょ う。
 お店は東山丸太町を北へ上がって、ひとつめの交差点を左に入ったところにあります。お蕎麦屋さんですが、私は何故か、いつもカレーうどん (¥750)です。かやくご飯(¥280)を合わせて頼むと完璧です。今なら、食後にサービスのわらび餅が付いていて、必要かどうか希望を聞いてくれま す。第三土曜が定休ですからご用心。
http://www.kakutani-rouho.com/

 医学生時代は本当に、本当に貧乏でした。今時、絶滅品種の苦学生でした。親が医学部進学に反対だったので、アルバイトをしながら自活する毎日で した。上記の某教授のお話しのように、かく谷へは真実滅多に、でした。授業をサボることもしばしばで、同級生が、彼は生活が苦しくて、と弁解してくれるの ですが、教官は「それにしてもアルバイトのために授業をサボるとはけしからん」ととりつく島もありませんでした。当然ですよね。
 京大の医学生は自転車通学が多く、私立の医学生のように外車を乗り回していません。とにかく、本代と勉強時間が半端ではありませんから、今でもひょっとしたら「かく谷の天ざる」を高値の花と思っている学生がいるかも知れません。彼氏には向きませんね。
 生物学実習の終講は、大文字登山でした。頂上で、教授から正調の「紅萌ゆる」を伝授されました。
 空腹に耐えて、ただ自分と明日を信じて口ずさんだものです。

 「嗚呼又遠き2000年 血潮の史や西の子の
  栄枯の跡を思うにも 胸こそ踊れ若き身に」
 かっこよくないね。
 http://music.geocities.jp/yoshidaryou21/audio/audio04.html

 世の中は絶えず、目まぐるしく移り変わっています。テレビや週刊誌だけを情報源に暮らしていると、目の前で移り変わるものに目を眩まされます。 そして、「変わらないもの」があることを、つい見落としてしまいます。今日は新しくても、明日はもう古いものばかりを追いかけても、自分の中には何も残り ません。変わらないものの価値に目覚めることは、ひとつ賢くなるということです。

 「シュプレヒコールの波 通り過ぎてゆく
  変わらない夢を 流れに求めて
  時の流れを止めて 変わらない夢を
  みたがる者たちと 闘うため」

 この歌は深い。                (中島みゆき「世情」)
 http://www.youtube.com/watch?v=TxvHq3jPyoE

 かく谷の天ざるを余裕で食べられる学生もいます。それをいつか食べられる日がくることを念じて、今は耐えている者もいます。誰にも知られない、ささやかな夢です。そんな夢に、気づいて、応援してあげられる人でありたいと思います。

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