京の路地から From Kyoto with Love

Why don't you visit Kyoto to meet something new? 京都は私の空気、水のようなもの。新しい京都、古い京都。その中で、日々綴った、現代の枕草子。

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Location: 京都市, 京都府, Japan

悪戯な好奇心の猿一匹、飼っています。Keeping a curious monkey in my mind.

Jun 16, 2010

京玄庵、産地偽装の嘘つきそば屋

(当然ながらこのお店はもうありません。産地偽装が大きく取り上げられている現在、とてもやってゆけないのでしょう。最近国産のそば粉だけでやっていこうとした京都の良心的なおそば屋さんが、やはりやってゆけないからと、閉店した話しを聞きました。その辺のそば屋は基本、中国産のそば粉を使っているのです。それでも、おいしく作れば、何も京玄庵のように北海道のそば粉を使っている、なんて書く必要はないのです。
 この店を勧めていた多くのHPやブログが、まだ残っています。「食べログ」のような怪しいサイトはともかく、店の外観や、店内の内装に騙されて、推薦記事を書いている無責任なブログがいかに多いかと思うと、あきれかえります。なかば芸能人のような人も宣伝か、やっぱり外観に騙されて推薦しているものもあるようです。どのブロガーがあてにならないのかが、実によくわかるので、是非読んでみて下さい。)


 八坂神社の南門(正門です)を出て少し下ったところに、京玄庵 (075-551-0035) という怪しいそば屋があります。いかにも京都らしい屋号で、お手軽においしい食事ができそうです。ところが、これが大嘘つきのひどい店です。景気が悪くて、老舗が店をたたんで、後に得体の知れない、老舗然とした屋号のお店ができる京の悲しさですが、初めて入って、あまりに人をバカにした商法に立腹しました。
http://www.kyo-gen-an.com/

 今日6月16日に行ったのですが、メニューに「辛味大根そば」と書いてあり、それに添えて、ご丁寧に、「京都の辛味大根、通称ねずみ大根」と添え書きしてあります。これには驚いた。店員を呼んで、「辛味大根そばできるの?」と聞くと、「はい、できます}と言うから、もう観光京都もここまで落ちたかと、絶望的気分です。

 京都の辛味大根は鷹峯に産する京野菜で、高島屋さんの地下でも手に入ります。が、これは冬期限定の野菜で、どんなに遅くても3月いっぱいがいいところで、6月に辛味大根があるわけがありません。店員に、一体どこから辛味大根を仕入れているのかと尋ねると、板場にきいてくる、という返事です。帰ってきた店員の言うには、「現在は群馬産のものを使っています」との返答です。思わず「この、嘘つき!」と怒鳴ってしまった。
http://www.news88.net/giso/190/191/

 京野菜を使っていると称して、群馬産の野菜を出していればこれは立派な産地偽装で詐欺行為です。知っている人ならば、その味は天と地ほども違います。四条河原町を下がったところにある「つるや」(075-341-1631) さんでは3月に入ると「辛味大根そば」はメニューから消えます。もう辛味大根がないんだから仕方がないのです。
http://www.kyoto-green.com/shop/027/index.html
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%94%A3%E5%9C%B0%E5%81%BD%E8%A3%85

 京玄庵には「鴨なんばん」もメニューに挙がっていますが、鴨も京都では冬の食材です。真に真鴨を扱うお店では、3月を過ぎると鴨はメニューから姿を消します。多分、鴨と言っても養殖の合鴨(アヒル)を使っているのだと思いますが、京都に来て、京野菜の辛味大根や、鴨を食べる人たちを騙して金を稼ごうという魂胆は、さもしい小商人根性の最たるものです。そもそも、包丁一本に命をかける板前のやることではないと、私は思っています。店の板場にいる者どもに「恥を知れ」と言いたい。京都人として恥ずかしいので、店名の「京玄庵」から「京」を取り除きなさい、と言って店を出ました。
http://blogs.dion.ne.jp/inaka1515/archives/6432167.html

 ところで、この店を知ったのは、最近買ったあるグルメ情報雑誌からです。成美堂出版という出版社が出している「京都いま評判のうまい店」というMOOKで、新倉砂穂子・編集になっています。出版の良心を疑う暴挙ですが、要するに自分で足を運んで、メニューをチェックして取材していないこと強く疑わせる状況です。きちんと取材もせずに、「うまい店」なんて人に勧める本を出すとは、出版界のあきれた体たらくです。出版業界の不況は、実は出版業界の内部のこんな手抜き状況が原因のひとつだと思わせられます。もう二度と、この出版社と編集者は信頼できないと思いました。

 産地偽装や賞味期限の偽装がこれほど騒がれても、まだやっているのです。お店は、それでお客を騙してでも、儲ければそれでいいわけですが、滑稽なのは、群馬の大根を食って、やっぱり京都の大根はちがうわ、なんて人前で嘯いている味覚音痴のお客たちです。つまり残念ながら、こんな風にして、心ない情報誌の記事や、味のわからない人の書いたブログに騙されて、私たちの味覚が洗脳されているのです。店が町家風だからといっても、店の宣伝がいかにも本物くさいことを言っているからといっても、自分の舌でその嘘を見抜けるようにならないと、一生騙され続けることになるという好例です。

 そもそもこの京玄庵というお店は、一流になろうとは思ってもいないようです。京都で一流と言われるためには100年かかりますから、手っ取り早く、「町家」とか、「京風」めいた宣伝で客を集めて稼ごうという腹のようです。一流であるためには、ありもしない「京都の辛味大根」を看板に挙げながら、その実、群馬の大根を食わせてはいけません。それに、冬期の食材である鴨を6月に売ってはいけません。合鴨を鴨といって売る店はたくさんあって、鴨と名が付いている以上嘘ではない、と思われれるかも知れません。しかし、一流のお店では鴨はやはり季節メニューで、冬期限定です。三流でも三流なりの食についてのこだわりを示さないと、京都で支持され、生き続けることはできないと思います。これは本物で、旨い、というお店を京都人は知っています。

 京都は飲食店の経営の難しい土地です。最近は、大阪や他の地方の資本の居酒屋チェーン店の花盛りです。経費・原価を切り詰める、というのがキー・ワードになっているようです。味気ないですね。本当にいいお店も、必ず成功するとは限りません。銀座の「資生堂パーラー」が高倉通りに出店したことがありましたが、すぐに撤退したことも記憶に新しいことです。
http://kyotobimiclub.com/special/soba.html

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