京の路地から From Kyoto with Love

Why don't you visit Kyoto to meet something new? 京都は私の空気、水のようなもの。新しい京都、古い京都。その中で、日々綴った、現代の枕草子。

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Location: 京都市, 京都府, Japan

悪戯な好奇心の猿一匹、飼っています。Keeping a curious monkey in my mind.

Aug 11, 2010

腹痛発作、自分で内科診断学

 木曜日、18時頃、急に左の季肋部痛に襲われました。急性腹症です。冷や汗ものでした。とにかく痛い。左の肋骨下から、側腹、背部に放散する痛みです。真剣に救急車を呼ぶべきか、考えました。

 一番恐れたのは、腸間膜動脈の血栓症です。もしそうなら、広汎な消化管の壊死を発症する危険があり、超救急です。次に考えたのは、急性膵炎です。飲酒はしないですが、何らかのストレスから発病したのかもしれません。左の尿路結石も怪しい。もう一つ、腸閉塞もあり得ると思いました。熱はないので、炎症性疾患はとりあえずないものと診断する。

 初めての痛みです。下痢も嘔気もない。それに鼓腸はない。ということは、消化管ではない可能性が大きい。直腸癌があって、腸管が狭窄して、腸閉塞症状を発症、という可能性は低そうだ。疝痛発作ではないように思った。持続痛です。歩けるようになって排尿しましたが、肉眼的血尿なない。なら、尿路結石ではないのではないか? ちょうど豚肉のお好み焼きを食べていたので、やっぱり膵炎が怪しい。なら、膵臓癌もありうるか?季節柄脱水症状が影響しているかも知れないと思うと、結石の可能性は捨てがたい。

 食事中だったが、とても食事を続けられる状態ではない。体位にかかわらず痛い。座席で七転八倒している。やっぱり救急車か? でも、病院に到着したときには、疼痛がすっかり治まっているという可能性も十分ありうる。それは医師として、恥ずかしい。タクシーを呼んでもらうか?

 15分くらいで痛みが治まってきた。歩ける。なら、ひとまず家に帰って横になって考えよう。これなら、バスで帰れそうだ。自宅に着いたころには、疼痛はすっかり治まっていて、空腹感を覚えた。そこで、食事の準備をして2度目の夕食となったのですが、もうあの発作は起こらなかった。なら、膵炎ではないのではないか?

 翌朝、病院へ行って、取りあえず、どの科にも受診せず、単純の腹部CTスキャンをオーダーしました。結果で必要なら、MRIや、造影の検査を考えることにしました。このCTで診断が確定しました。結局、終始無投薬での診断確定、症状緩解となりました。

 さて、診断は何だったでしょうか? 因に、その後発作の再発はありません。が、病気は持ったままです。治療に関しては、放置可かどうか、考えているところです。

http://www.hiroshima.med.or.jp/kenkojoho/booklet/10/book001.htm

 教養課程から医学部に上がった最初の講義が「外科診断学」でした。教授が、「胸痛を主訴に患者がやって来た。で、最初に何をするか」と講義を始めました。指名された一人の学生が「痛み止めをします」と答えると、教授は、「それは典型的な藪医者のすることだ」と一喝。その学生は、とても優秀な人でしたが、国家試験に不合格でした。でも、もともと優秀な方ですから、今ではとても立派な先生になっておられます。
 内科にしろ、外科にしろ、腹痛や頭痛の原因は山ほどあって、その正確な診断は、容易ではありません。どうか誤診する医者を、安易に責めないでやってほしいものだと思います。上に挙げた、左季肋部通の鑑別診断には、白血病まであがってきます。救急は大変なんです。

 誤診の例で、最近うちの産婦人科であった症例を紹介します。
 50歳の女性が不正出血で来院されました。外来担当医は、型どおりに婦人科の診察をして、子宮の腫瘍と診断、手術の予定を組みました。同時に実施したMRIの診断も同様で、悪性腫瘍を否定できない、とのことでした。
 ところが、この患者さんが数日後、大出血で私の当直勤務の夜、救急で来られました。実際の出血の様子と、超音波検査をして、「妊娠してませんか?」と患者さんに問うと、可能性はありますとのご返答でした。子宮内容を取り出してみると、予想通り、肉眼的「胞状奇胎」です。直ちに緊急手術の手配をしました。

 初診時に超音波検査がされていて、MRIまで実施していたのに誤診されていました。「胞状奇胎」は極めて特徴的な超音波所見があり、産婦人科医なら、それだけで誤診することはまずありません。何故誤診したのでしょうか?
 第一に、50歳という年齢から、「妊娠」の可能性を全く考慮していなかったのが最大のミスでした。初診時に妊娠反応検査を実施していれば、診断を誤ることはなかったものと思われます。産婦人科の診察に先立って、最も重要な情報は、患者さんの「最終月経」です。この患者さんの場合、実際の最終月経は去年の10月か、11月だったと思われるのですが、流産のため断続的に不正出血があったため、その不正出血を月経と誤ったことが悔やまれます。
 産婦人科医の座右の銘に「女を診たら妊娠を疑え」と言います。長く仕事をしていて、自信がついたころに、その銘を思い出させる症例にぶち当たって、反省を強いられるのです。

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