京の路地から From Kyoto with Love

Why don't you visit Kyoto to meet something new? 京都は私の空気、水のようなもの。新しい京都、古い京都。その中で、日々綴った、現代の枕草子。

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Location: 京都市, 京都府, Japan

悪戯な好奇心の猿一匹、飼っています。Keeping a curious monkey in my mind.

Mar 16, 2012

無月経と不正出血

産科・婦人科といえば、出血とは切り離せない診療科です。血の怖い先生には最も向かない職業でしょう。分娩のときに1000gくらいの出血をみることも稀ではありません。当直の夜の定番は、出血を訴える患者さんとの対応です。女性にとって性器出血は、女と生まれた限り宿命の道連れなのですが、やはり気になって電話をいただくことになります。妊婦さんなら流産や早産、ご年配の女性なら癌ではないかと、電話の向こうの息づかいが真に迫ります。

最近経験した出血に関する症例です。一例めは出血しない方です。若い女性の月経が止まった場合、まず考えるのは妊娠ですが、その方の場合は明らかに妊娠ではなくて、5ヶ月間も月経がないということでした。3ヶ月間月経がなければ「無月経」と診断して、検査や投薬が行われます。
とりあえず脳と卵巣の機能に異常がないか、採血をさせていただくとともに次のお話そしました。

健康な女性の月経が止まる原因はいろいろありますが、看病やスポーツ、夜間の勉強など何らかのストレスが関与よしていることが多いので、何か思い当たることがないか考えてみてほしいという点と、もう一つ、体の中で女性ホルモンを作る原料はコレステロールなので、極端に脂肪の少ない食事を続けると、女性ホルモンが不足して卵巣が正常に働かなくということです。

一ヶ月後に外来に来られたとき、明るい表情で月経がきたと言われて、実は食事の脂肪を減らしていたことを白状されました。問題は解決して、痛くてお金のかかる検査や無駄なホルモン剤投与をしなくて済みました。女性ホルモン剤を投与すれば、定期に出血はありますが、それは薬物による出血にすぎなくて、卵巣が正常に働いて月経がくるのとは根本的に意味が違います。

医者のすることは検査をしたり、薬を出したりすることだと思っておられる方が多いのですが、実は医師の本当の仕事は、患者さんが検査や薬物なしで生活できるように指導することなのです。薬をせがんで来院する患者さんには嫌われてしまいますが、自分の生活をよく見つめ直してみることが大切です。無責任なマスコミや、雑誌の記事に振り回されて、健康を見失わないようにしていただきたいと念じています。
もう一例、閉経後の出血の患者さんのお話があるのですが、またの機会にお話します。

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