元気のいい女流作家3人と普通のマドンナ
まず、内館牧子さんの「愛し続けるのは無理である」です。(内館牧子「愛し続けるのは無理である」講談社文庫)
まず初っ端の前書きから、「一人の男や一人の女を、生涯ひたすらに脇目もふらずに、恋愛時代と同じように熱く『愛し続けるのは無理である』と考 える」とピシャリです。そして自分の好きなタイプの男について、かつてTBSのドラマ「週末婚」で、もし大切な人が模型入りのビンの中の模型を欲しいと 言ったらどうするか、という場合に、兄弟の兄の方は、長いピンセットで取り出すとか、そういう方法を考えるのに対して、弟は咄嗟に拳でビンを叩き壊して取 り出し、血みどろになって傷つく、という設定で、彼女はその弟の方が好きだと言います。
また、「週刊プロレス」に北海道の山奥に熊の剥製を運んで、プロレスラーの小橋建太さんと闘う写真を撮ろうという企画があったとき、カメラマ ンが、「ホントの熊でも出てきたらどうするんですか」と言ったら、小橋さんは「闘うしかないだろ」と答えたそうです。彼女はその小橋さんの返答に、感動の あまりめまいがしたと書いています。
そして、あるとき某有名女優が「ブルドーザーみたいな男は大嫌い」と言ったことに対して、彼女は私はブルドーザーみたいな男が一番好き、と言 います。そして、その女優の「ワインの知識ひとつなく、頼みかたも知らない男は嫌い」という意見に対して、そんなもの知らなくていい。私は口に含んだ日本 酒を傷口にプッと吹きかけ、「病院なんか行かねえよ。傷には酒が一番効くんだ。べらぼうめ」と言うような男が好きだ、とも言っています。
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次は、小手鞠るいさんの「結婚するなら、猫好きオトコ」です。(小手鞠るい「結婚するなら、猫好きオトコ」河出文庫)
まず過去に付き合った3人の男を紹介します。一人目は京都生まれの京都育ちの運送会社社員。口癖は「あほちゃうか」と「いてもうたろか」。二人 目は鹿児島生まれで鹿児島育ちの九州男児で、職業はコック。口癖は「黙ってついてこい」と「俺に任せとかんかい」だったそうです。そして三人目はハワイ生 まれのハワイ育ちで、付き合い初めはプー太郎。口癖は「のんびりやりなよ」と「なんとかなるさ」だったそうです。先の二人とはそれぞれ4年の交際で別れ て、結局三人目の男と法的に夫婦になったそうです。
先の二人と三人目の違いは、前二人が犬好きだったのに対して、三人目は猫好きだそうです。で、彼女の結論は、結婚する男は猫好きでなければならない、ということだそうです。
彼女の言うには、犬好きの男は命令するのが好き、従わせるのが好き、支配するのが好き、なのだそうです。そして女を犬のように拘束して、厳しくしつけ、芸を教え込み、訓練し、女の自由を束縛するのが愛、だと思っている、と言っています。
ところが犬好きな男はベッドの中では急に淡白になってしまい、その行為は決まりきっていて、なんの工夫もない、創造性もないのだそうです。それでいて外に出ると、猫のように我儘になり、自由でチャーミングな女のお尻をしょっちゅう追いかけ回しているといいます。
ところが猫好きの男なら、女は自由にいられるのだそうです。どこへ行こうと、何をしようと、自分の勝手。好きな時間に起きて、好きな時間に出か けて、好きなだけ遊んで、好きな時間におうちにもどってくればいいということです。猫好き男は、掃除洗濯料理裁縫、お風呂掃除、トイレ掃除、スーパーでの 買い物、ガーデニング、なんでもこなしてまめ。
そして、猫好き男は、ベッドの中では非常に情熱的なのだそうです。犬好きの男とちがって、自分の欲望を果たすためだけに性急に事を運ぶ、などということは決してなく、終わったあともいつも女の体をそっと抱いていてくれる、と言っています。
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最後は、角田光代さんの「恋をしよう。夢をみよう。旅に出よう。」です。(角田光代「恋をしよう。夢をみよう。旅に出よう。」角川文庫)
上の2冊はタイトルのインパクトで買ったのですが、この三冊目は、目次の「あなたのおうちは散らかってる?」を見て買いました。
角田さんの仕事部屋は4畳半の畳敷きですが、実際に畳が見えるのは半畳だけだそうです。こたつを置いてあるために、こたつの周りで手の届く範囲 にものを集める癖がつくので、あらゆるものがこたつ中心に集まることになるというのです。そして、彼女は忘れっぽいために、というか、片付けると、その瞬 間に忘れて、もう永遠に思い出せないために、何でも、片付けないで、目に見える範囲に置いておく習慣のために、周囲にものが無限に蓄積する、というわけで す。そのため、片付ける方策として、ついに自宅から5分のところに新しく仕事場を借りたそうです。今の4畳半を片付ければ済むことだ、とは言わないで欲し い、と彼女は言っています。そうやって、もと仕事場の4畳半を片付けたので、堂々と友達が来ても、部屋を見せられるようになった、と書かれています。
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3人とも、正しいかどうか、と好き嫌いはともかく、気持ちがいいくらい自己肯定的で、しかも、自分の姿勢がはっきりしています。それぞれ、内館 さんは1948年、小手鞠さんは1956年、角田さんは1967年のお生まれです。年齢はそれぞれですが、臆面もなく自分の主観を貫く論調が素晴らしいと 思います。
愛し続けるのは無理、というのは世の中の仮面夫婦を見ていれば明かだし、猫好きの話も、私自身が猫好きなので、納得できるところが多いところです。部屋の片付けも、片付かないのが当たり前と開き直っているところに拍手を送りたい。